黄昏バラッド


***


気づいたら朝になっていた。

本当は夜中の内に出て行こうとしたけど、お礼はやっぱり直接言うべきだと思ったから。


「……あれ?早起きだね。しかももう着替えてるし」


暫くしてサクが目を覚ました。まだ寝ぼけているのか、布団の上でぼーっとしている。


「あのさ……」

あれから一睡も寝れずに考えていた。

なんて言えば違和感がなく、お互い嫌な気持ちをしないでさよならできるのかを。

私が勇気を出して言おうとした時、なぜか突然サクが吹き出した。


「ぷっ……ノラの前髪すごいことになってる」

――!!

私はとっさに前髪を手で押さえた。

確かに髪をくしゃくしゃにしたまま寝てたし、寝癖ぐらいついてるだろうけど……今はそんなことどうでもよくて。


「俺もすごいでしょ?いつも右側向いて寝るから。ほら」

サクはわざと私に寝癖を見せてきた。

右側の髪はうねうねしていて、すごいって言うより可愛い。


「顔洗ったら朝マックでも買いに行こうか」

サクはそう言って立ち上がった。


サクが起きたら言おうと思ってたのに。

〝彼女〟に悪いから出て行くって。

サクは私のことを本当に猫みたいに思ってるかもしれないけど、付き合ってる人がいるなら、これはダメなことだよ。
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