黄昏バラッド
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気づいたら朝になっていた。
本当は夜中の内に出て行こうとしたけど、お礼はやっぱり直接言うべきだと思ったから。
「……あれ?早起きだね。しかももう着替えてるし」
暫くしてサクが目を覚ました。まだ寝ぼけているのか、布団の上でぼーっとしている。
「あのさ……」
あれから一睡も寝れずに考えていた。
なんて言えば違和感がなく、お互い嫌な気持ちをしないでさよならできるのかを。
私が勇気を出して言おうとした時、なぜか突然サクが吹き出した。
「ぷっ……ノラの前髪すごいことになってる」
――!!
私はとっさに前髪を手で押さえた。
確かに髪をくしゃくしゃにしたまま寝てたし、寝癖ぐらいついてるだろうけど……今はそんなことどうでもよくて。
「俺もすごいでしょ?いつも右側向いて寝るから。ほら」
サクはわざと私に寝癖を見せてきた。
右側の髪はうねうねしていて、すごいって言うより可愛い。
「顔洗ったら朝マックでも買いに行こうか」
サクはそう言って立ち上がった。
サクが起きたら言おうと思ってたのに。
〝彼女〟に悪いから出て行くって。
サクは私のことを本当に猫みたいに思ってるかもしれないけど、付き合ってる人がいるなら、これはダメなことだよ。