黄昏バラッド
「~♪♪」
結局私はなにも言いだせないまま、サクと朝ごはんを買いに行くことになった。そのあいだサクはなんだか上機嫌で鼻唄を歌っている。
聞いたことのないメロディーだから、きっとこれもサクが作った曲。
「今日は晴れてよかったね。雨だと買い物行くの大変だし」
サクの移動手段はいつも徒歩。駅は近いし、コンビニもスーパーもあるから不便ではない。
「……ねえ、サク」
「んー?」
言わなきゃ。でも言ったらどうなるんだろ?
そうだね。ばいばいって、それで終わっちゃうのかな。
「ノラ?」
私の表情を見てサクが心配そうな顔をした。
「ううん、なんでもない」
私ってズルいね。十分、図々しい女だよ。
でも朝ご飯を食べたら言うから。サクには感謝してるけど、特別な感情なんて芽生えてない。むしろ恋なんてこりごりだし、できればしたくない。
だから大丈夫。傷ついたり、ハマったりしてないから。
きっと笑顔でばいばいできるよ。