黄昏バラッド


「~♪♪」

結局私はなにも言いだせないまま、サクと朝ごはんを買いに行くことになった。そのあいだサクはなんだか上機嫌で鼻唄を歌っている。

聞いたことのないメロディーだから、きっとこれもサクが作った曲。


「今日は晴れてよかったね。雨だと買い物行くの大変だし」

サクの移動手段はいつも徒歩。駅は近いし、コンビニもスーパーもあるから不便ではない。


「……ねえ、サク」

「んー?」

言わなきゃ。でも言ったらどうなるんだろ?

そうだね。ばいばいって、それで終わっちゃうのかな。


「ノラ?」

私の表情を見てサクが心配そうな顔をした。


「ううん、なんでもない」

私ってズルいね。十分、図々しい女だよ。


でも朝ご飯を食べたら言うから。サクには感謝してるけど、特別な感情なんて芽生えてない。むしろ恋なんてこりごりだし、できればしたくない。

だから大丈夫。傷ついたり、ハマったりしてないから。

きっと笑顔でばいばいできるよ。
< 37 / 270 >

この作品をシェア

pagetop