黄昏バラッド


朝ご飯は持ち帰りにして、私たちは家に戻った。


「久しぶりに食べたけど朝マックって美味しいよね」とサクはテレビを見ながらくつろいでいる。

そろそろ言わなきゃ。大丈夫、もう決めたんだから。


「あ、あのさ、私やっぱり出て行くことにした」

精一杯の声で、なぜか私の姿勢は正座。


「なに?突然どうしたの?」

そうだよね。出て行くには理由が必要だ。家に帰るって言えば納得するだろうけど、それは死んでも言いたくない。


「……だってサク、彼女いるじゃん」

私は小さな声でポツリと呟いた。

なんで私が色々悩んでるんだろう?
これはサクの問題なのに。


「いないよ。なに言ってんの?」

「……ピンクの歯ブラシがあったよ。あれは彼女のでしょ」

サクの表情が少し曇った気がしたけど、すぐに普通に戻った。


「いないよ」

「嘘でしょ。目が泳いでるよ」

私なら誤魔化せると思ってるんだろうけどそうはいかない。男の人の仕草や言動を見極められるほどの力はないけど、嘘をついてるかどうかぐらい分かる。

するとサクはポンポンと私の頭を叩いた。


「本当。だからノラはここにいていいんだよ」

なんてサクは嘘が下手な人なんだろう。

逆にそんな顔をされたら問い詰めるなんてできなくなっちゃったよ。……もしかして彼女と上手くいってないの?

それとも別れたばっかりとか?

どうせ歯ブラシのことを深く聞いても、俺が二本使ってるとかバレバレの嘘を付くんだろうね。
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