黄昏バラッド
文字どおりそれは、寝ている猫のストラップ。
三毛猫、白猫、黒猫、虎猫、ぶち猫の全5種類らしい。サクは迷うことなくそのガチャポンをやり始めた。
……ガチャポンって、サクの方が子どもじゃん。
「三毛猫がいいな。うちの猫がそうだったから」
……私の名前の由来は猫でしょ。
サクってそんなに猫が好きなのかな?猫に限らずサクって動物ならなんでも好きそうだけど。
「あー!三毛猫だ」
ガチャポンの透けてるボールからは三毛猫の模様が見えた。
「ふーん。良かったね」
私のテンションは上がることなく、サクを呆れた顔で見ていた。だってこんなの高校生にもなってやらないし、そういうキーホルダー系って興味ないんだよね。
「もう1回やろーっと!」
「え?まだやるの?」
気づくとサクはもう一度ガチャポンに手を伸ばしていた。
もしかしてコンプリートする気?
サクの年齢聞いてないけど、私より年下とかじゃないよね……
?
「あ、また三毛猫でたよ。はい。ノラ」
サクは私にそれを差し出した。
「な、なに……?」
「おそろいで付けようよ。偶然、三毛猫2個出たし」
……そっか。サクは初めからなにが出ても2回やるつもりだったんだ。
ガチャポンのふたを開けると、小さなストラップが出てきた。もう子どもじゃないけど、たしかににこれは可愛いかも。
「……スマホがないから付ける所ないけど、貰っておく」
私がそう言うと、サクは嬉しそうに笑った。