黄昏バラッド


「買い物か?えーと……その子は?」

男の人の視線が私に向いた。

自己紹介とかするべきなのかな?

でも名前は言いたくないし、格好は制服だし、サクがヘンな誤解をされなきゃいいけど……。


「俺の友達だよ」

サクは私のことをシンプルにそう言った。

べつに普通のことなのに、なんだかその言葉に違和感。


サクと私は友達なの?友達になった記憶はないんだけど、まあ……それ以外説明のしようがないよね。


「……そっか。女子高生と友達なんて超羨ましいなあ!」

深く突っこまれると思ったのに、案外あっさりとした反応。むしろ、わざとテンションを上げようとしてるのは気のせい?


「俺は林原鉄(はやしばら てつ)。宜しくね」

なぜか握手を求められている。

私は軽く頭を下げて、無言でそれに応じた。トゲトゲの痛そうなブレスレットが当たりそうで怖かったけど、とりあえず大丈夫だった。


「じぁ俺、買い出しの途中だから行くわ」

軽く右手を挙げて、サクに笑いかけた。


「……うん」

やっぱりサクがヘン。なんか困った顔してる。


「……あ、俺まだあそこで働いてるんだ。暇ができたら顔ぐらい出せよ」

鉄って人はそう言って、その場を去って行った。
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