黄昏バラッド
その帰り道、サクはなにかを考えるように無言だった。
あんなに上機嫌で歌ってた鼻唄は聞こえてこない。
サクっていつものほほんとしてて悩みがなさそうに見えるけど、そんなわけないよね。
サクの名前が亮だとか、ロック系の知り合いがいるとか、そんなことは私に関係なくて。私が気になるのはなんでそんな寂しそうな顔をしてるのかってことだけ
「……サク大丈夫?」
気づくと私はサクの服の袖を掴んでいた。
「んー?大丈夫だよ。ごめんね」
なにその作り笑い。全然大丈夫そうじゃないけど。
「ごめんって、別に私に謝る必要ないじゃん」
「……あーでも、ほら。本名教えてなかったでしょ?」
だからその作り笑いやめてって。
「別に気にしてないし。ってか私も名前教えてないし」
「はは、そうだったね」
本名を知られたから落ちこんでるわけじゃないでしょ?
鉄って人となにかあったの?それとも別の理由?
「……サクはサクだよ。私は亮って人なんて知らない」
私が出逢ったのはあの公園で歌うサクで、優しくしてくれたり、親切にしてくれたり。
今隣にいるのは亮じゃなくてサク。
だからそれ以前に何があったとか私には関係ないこと。
「はは、なんか励まされちゃった。……そうだね。ノラもノラだもんね」
なにを今さら。
でもちょっと機嫌が直ったみたいで安心した。