黄昏バラッド
サクはそのあと、私の知らない歌を何曲も歌った。
どれもキレイなメロディーで、歌詞もなんだか魅力的。
その間、すれ違う人はサクの歌声に立ち止まってはいなくなり、それが何回も繰り返された。
もちろん、全然見向きもしない人だっている。
最初から最後までサクの歌を聞いてる人は数えるぐらいしかいなかった。
私は音楽に詳しくないけど、誰かの曲をコピーして自分の歌みたいに歌っている人より、聞いてもらえなくても自分で作った歌を歌っている人の方がかっこよく見えた。
「ねぇサク。場所って変えられないの?向こうの方が人目に付きやすいよ」
私が偉そうなことを言う資格はないけど、サクの歌は泣けるぐらいスゴいよ。
だから人目に付かないこんな場所で歌っているのがもったいないぐらい。
「いいんだよ。沢山の人に聞いてもらいたくて歌ってるわけじゃないから」
……?
なんかそれってどうなの?
聞いて欲しいから曲を作って、この場所で歌ってるんじゃないの?私はてっきり……。
「それならサクはなんで歌を歌ってるの?」
それを聞いた後で、すごい後悔した。
例え理由がなくても私がとやかく言うことではないから。
「……自分の為かな」
サクはポツリと呟いた。