黄昏バラッド
「今日は夜のバイトはないの?初めて会った時に行ってたじゃん」
中央公園の中を歩きながら、ふっと思い出した。
「ないよ。あれは副業だから。手が足りない時に手伝いに行ってるだけ」
「……し、仕事ってなにしてるの?」
聞いても良かったのかな。でもサクのことを少しずつ知っていきたい。
「はは、なんでそんなに聞きづらそうにしてんの。別に聞きたいことはなんでも聞いてよ」
サクは私のおでこをちょんっと小突いた。
サクって心が読めるのかな?
一瞬で私の不安なんて吹き飛ばしてしまう。
「昼間は飲食店のウェイターで、夜はクラブハウスの清掃」
「……そうなんだ。なんか掛け持ちって大変そう」
なにもしてなくてサクに頼ってる私が言う台詞じゃないけど。
「大変じゃないよ。正社員じゃないし。いつまでもバイトで食い繋いでいるダメな大人」
サクは苦笑いをして、私の先を歩き始めた。
「……そう思うならなんでバイト続けてるの?」
聞きたいことは聞いてもいいんでしょ?
私はバイトでも正社員でも働くことに変わりはないと思うし、高校生の私から見ればお金を稼いでいるだけで立派に思えるけど……。
サクには自分のことをダメな大人なんて言って欲しくないから。
「うーん。なんでだろうね?ピーターパン症候群かな」
また下手な嘘でごまかす。
聞きたいことは聞いてもいいって言ったくせに。