黄昏バラッド

――それからどのくらい時間が経ったんだろう。


スマホがないから時間が分からないけど、多分あれから2時間は過ぎたと思う。

私の後ろでは噴水が短いアーチを描いていて、その涼しさが背中でも感じられた。

明日からどうなるんだろう。

みんな心配したりするのかな?なんて思ってる私はやっぱりリセットなんてできないらしい。


「……あれ?まだここにいたの?」


暗闇の中で聞こえた声には聞き覚えがある。


「ここら辺、たまに変な人とかいるから危ないよ」

お人好しでおせっかいで、すごく綺麗な声で歌うあのストリートミュージシャン。

私は話しかけられているのに、また無言で顔さえ見ようとしなかった。だってそうすれば、嫌でも立ち去ると思ったから。
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