黄昏バラッド


「サク?あー亮のこと?そうやって呼んでるんだ」

あ……って思った。これも言ったらダメだったのかも。サクだって何かの事情があって名前を偽っていたのかもしれないし、その可能性を考えてあげられなかった。


「咲嶋だからサク。なんかあいつらしいネーミングだな」


ちょっと待って。

なんか今、ふいにサクの本名知っちゃったんだけど。



――咲嶋 亮 (さくじま りょう)

これがサクの名前?

これじゃ、本当に探ってるみたいで罪悪感が芽生えてきた。とりあえず今のは聞かなかったことにする。


「んでなんだっけ?俺と亮の関係?」

「……いや、もういいです」


これ以上サクのことを聞いたら反則な気がするから。


サクのことはサクに聞こう。それだったら許されるよね?


「なんでだよ?聞いてよ!俺と亮は知り合いっつーか、友達っつーか、仲間みたいな感じ?」

聞いてもないのに鉄さんはペラペラと喋りだす。耳をふさぐ暇なんてないほど、その情報は私の頭の中へ。


「まあ、あいつとは学生の時からだから10年以上の付き合いかな」

「ええ?10年?」


思わず反応してしまったけど、10年だと色々と計算が合わないよ。鉄さんがサクよりすごく年上とか?それは見た目的にあり得るけど、友達とか仲間とか言ってたし……。


「なに?そんなに驚く?俺も亮も27だよ?別に普通っしょ?」

「に、に、27!?」

今まで上げたことのない声が出てしまった。
< 56 / 270 >

この作品をシェア

pagetop