黄昏バラッド



……どうって?

それはどういう意味で?


「あの……質問の意味がちょっと……」

私は首を傾げた。そもそも鉄さんは昨日サクに会ってるわけだし「どう?」なんて私に聞くのはヘンじゃないかな。


「あーなんつーか、うーんと……」

鉄さんが何故か口ごもる。

それはなんだか言葉を選んでいるような、言葉が見つからないような、そんな複雑な表情をしていた。

暫くして、鉄さんはまたタバコを吸い始めて、その甘い煙が空へとのぼっていく。そして……。


「あいつ笑ってる?」


それは私が想像してなかった言葉で、心がふわっと浮いたような気がした。

鉄さんと目が合って、その真剣な顔は真面目に聞いているんだって分かった。

私はなんでそんなことを聞くのか、なんでそんな顔をして聞くのか、頭の中はまた疑問ばかり。

ふざけた質問ならさらりと流せるのに、これは流せない。


「……私も最近サクと知り合ったから、なんて答えていいか分かりません」


サクは笑ってるよ。

何回も何回も私の前で笑ったよ。


でも、それを言うべきじゃない気がする。


だってその質問はもっと重いものでしょ?

私が軽々しく答えられることじゃないよ。


「そっか。ごめんね。ヘンな質問して」


サクの過去に何があって、鉄さんが何を思ってるのか私には想像できないけど、きっとサクにとって踏みこまれたくないことは確かだと思う。

だって私も絶対に立ち入ってほしくない心の扉があるから。

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