黄昏バラッド
「もしかしてオレンジジュース嫌いだった?」
それなのにまだ私に話しかけてくるこの人は一体なにがしたいんだろ……。
「制服ってことは学生でしょ?こんな所にいたら補導されちゃうよ」
「………」
その口調は優しくて、駅前でナンパしてきた男とは少し違う気がした。
でも私は簡単に人を信用したりしない。だって裏切られるのはいつだって信じた人だから。
「俺ね、今バイト帰りなんだ。バイトって言ってもクラブハウスの清掃だから2時間で終わるの」
「………」
聞いてないし、べつに知りたくない。
「ちなみに前の通りを歩くより公園抜けていった方が近道なんだ。……2時間もこんな所にいて退屈だったでしょ?」
こういう善人みたいな人が一番危ない気がする。
……とか思ってる私は、やっぱり矛盾してる。
だって自分のことなんてどうでもいいって思ってるくせに、警戒心だけは立派にあるんだから本当に笑える。