黄昏バラッド


私は何回この人に驚かされるんだろうか。本当に想像を越えることばかり言ってくる。


「う……うちの店って怪しい店ですか?」

私の感情は喜びよりも困惑だった。

だっておいしい話には裏があるっていうし、こんなにタイミングよく誘われるなんて絶対怪しい。

鉄さんはいい人だし、疑ってるわけじゃないけど、家出少女だって分かってるのに働けるってそういう所なんじゃないの?


「おい、怪しくねーよ。普通のお洒落なカフェ」

「………」

えっと、ここは笑うところ?

お洒落なカフェって……ピアスをいっぱいして、トゲトゲのアクセサリーをして、ロックな人が言っても信じられないよ。


「お洒落なカフェ風の怪しく店ってことですか?」

「おい」

私だって働けるなら働きたいけど、サクにだって堂々と言えるようなちゃんとしたバイトがいい。

いまだに半信半疑な私に鉄さんは呆れた顔をした。


「だーかーらっ!怪しくねーて。変わってるのは昼間はカフェで夜はライブハウスに変わるってことぐらい?」

「……ライブハウス?」

「そう。元々そうだったんだけど、昼間は客が入んないからカフェに改造したの」

なんだか本当っぽい?信じてもいいのかな。


「まあ、俺の店って言ったけど本当は前の店長の店。今は俺が店長代理」

「代理ですか」

「そこは突っこむなよ」


いつの間にか普通に話せる関係になっちゃったけど……本当に私そこで働いてもいいの?

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