黄昏バラッド

:サンセット


***


「ただいま」

日が暮れた6時過ぎ、サクが仕事から帰ってきた。なんだかこうやってサクを待ってるのがヘンな感じ。


「……お、おかえり?」

私は不自然に口ごもってしまった。だってここはサクの家だし、私が出迎えるのに違和感を感じるから。


「はは、なんで疑問形?」

サクは笑いながら肩にかけていたバッグを下ろした。

同棲しているカップルって、きっとこういう感じなんだろうな……。私たちは彼氏とか彼女の関係じゃないけどさ。


「サク……あのね」

私が話し始めようとした時、サクが突然〝何か〟に反応するように表情を変えた。


「ど、どうしたの?」

「……ノラ、鉄に会った?」

……え?

私はなんでバレてしまったのか理解できなくて固まってしまった。別に隠すつもりなんてなかったけど、なんか私の顔に書いてあったりしないよね?


「あーいや、タバコの匂い。この甘い匂いって独特だからさ」

ぜんぜん気づかなかったけど、きっと匂いが洋服に染み付いてしまってたんだと思う。

だって隣で何本も吸ってたし。
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