黄昏バラッド


「う、うん。コンビニに行ったら偶然……」

自分のタイミングで言おうと思ったのにな。まさか匂いでバレちゃうなんて考えてなかった。

私は言ったあとで、そっとサクの顔色を見た。


「そっか。鉄は目立つからすぐに分かったでしょ」

もっとイヤな顔をしたり、困ったりすると思っていたのにサクはいつも通りだった。


「う……うん。あのねサク……そのごめん!」

色々考えたけど、やっぱり最初の言葉は〝ごめん〟だった。


「なんで謝るの?」

「……私サクの本名聞いちゃった。あと年齢も」


別に聞きたくて聞いたわけじゃないけど。でも知っちゃったことは事実だから、一応謝っておきたかった。

もしフェアに私の名前を聞かれたら、その時は名乗るしかない……。そんなちっぽけな覚悟も実はしている。


「へ?そうなの?あれ?俺年齢言ってなかったっけ?」

「………」


サクは怒るどころか、拍子抜けの反応で逆に困る。

罪悪感もあったし、こっちは素性を話す覚悟もしてたっていうのに……。こんなことで悩んでた私ってバカみたいじゃん。


「い、言っておくけど私から聞いたわけじゃないから。別にサクが27歳でも全く気にならないし」

また可愛くない言い方をしてしまった。

だって自分だけこんなに悩んで恥ずかしかったんだもん。


「うん。ノラは17歳ぐらいだからきっと10歳差だね」

しかも言ってない年齢もバレてるし。まぁ、制服着てる時点で大体わかるけどさ……。
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