黄昏バラッド
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次の日、私は昨日貰った名刺を取りだして、そこに書いてある番号に電話することにした。
べつに約束してたわけじゃないけど、一応連絡しなきゃ。サンセットでは働けないって。
サクはいいって言ったけど、やっぱりダメ。
だって私が働くことで、嫌な記憶を思い出させたくないから。
私は残りの所持金を持って、近くの公衆電話を探した。
こういう時、スマホがないことに不便を感じる。
『はい。サンセット新かさい店です』
やっと電話を見つけてかけると男の人が出た。
『……あの、昨日名刺貰ったんですけど……』
私がそう言うと、電話の主は急に声色を変えた。
『おー、ノラちゃん?俺だよ。鉄』
電話に出たのは偶然にも鉄さんだったようだ
『電話待ってたよー。今暇だから丁度良かった』
……言わなきゃ。
せっかく誘ってもらえたけど。
『あの鉄さん……。私その、鉄さんのお店では働けません』
私は電話の受話器を強く握りしめた。
『あー。もしかして亮のこと?』
『……え?』
鉄さんは驚かず、むしろ初めから分かってたみたいな口調だった。私のほうが逆に動揺してしまって、切れそうな電話に慌てて10円を追加する。
『ってかノラちゃん今どこにいるの?』
『……え、どこって……。昨日のコンビニの近くの公衆電話ですけど』
『あーはいはい。あそこね。ちょっとそこで待ってて。迎えに行くから』
……へ?
私の返答を待たずに電話はすでに切れていた。
耳元で虚しく響くプープーという保留音。
迎えに行くってなに?
私は断ったんだからこれで終わりじゃないの?
色々と考えたけど、とりあえず私は言われたとおり鉄さんを待つことにした。
だって断った上にここで帰ったらさすがに失礼だと思って。一応、サクの知り合いだし。