黄昏バラッド
それから数十分後、鉄さんは再びバイクを止めた。
「着いたよ」
私はヘルメットを取り、周りを見渡すとそこは見知らぬ土地。大通りから離れてとても静かな場所だった。
「バイク置いてくるから中で待ってて」
鉄さん私を置いて奥の駐車場へと行ってしまった。
ここに来たことはないけど、ここがどこなのか分かる。
私の目の前にはレンガ作りのレトロな店。
大きな文字で【サンセット】と書いてあった。
……どうしよう。来るつもりなんてなかったのに。
店の小窓からは中の様子が見えて、木材で作られたお洒落なテーブルと椅子が並んであった。
どうやらカフェというのは本当だったらしい。
「なにぼーっとしてんの?早く中入って」
戻ってきた鉄さんに背中を押され、半ば強引に店内へと押し込まれてしまった。
「いらっしゃいませ。あれ、鉄さんおかえりっす」
白いエプロンをした店員さんに出迎えられたけど、この人もまたロック系のギラギラとした格好をしていた。
「おい、俺のことは店長って呼べ」
「代理じゃないっすか。どうせ店長帰ってきたら格下げっすよ」
ゲラゲラと他の従業員の笑い声。
みんな派手なピアスに、赤や黄色や緑色の髪の毛だった。
「鉄さんその子だれですか?新しいコレっすか?」
店員のひとりが小指を立ててニヤニヤしている。
「ちげーよ。新しい従業員」
え?え?今なんて……?