黄昏バラッド


サクになにがあったんだろう。

聞きたいけど、聞きたくない。


「俺はあいつに戻ってきて欲しいんだよ。つーかずっと待ってるんだけどね」

鉄さんの気持ち、鉄さんの本音。


「だからノラちゃんここで働いてよ。俺の愚痴も聞いて欲しいし?」

なんだかさらりと話が戻ったけど、私が働くこととサクのことは関係ないと思うんだけどな。


「サクの愚痴なら聞きたくありません」

私は露骨にイヤな顔をした。


「はは、じゃあ愚痴じゃなくて相談。それならいいでしょ?」

「………」

なんで私をそこまでして働かせたいんだろう。べつに私じゃなくても他にいるだろうし、人手は十分足りていた。


「……鉄さんが純粋に私を通してサクと繋がっていたいって言うなら考えます」

だってそうでしょ?

鉄さんはずっとサクに会いたくてこの場所で待ってた。

だからサクと近い人間の私を傍に置いて、繋ぎ止めたいんでしょ?


「ノラちゃん意外と鋭いね」

本当はサクの気持ちが分からないまま決断したくない。

この場所に戻るのも、咲嶋亮として生きるのもサクが決めることだから。
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