黄昏バラッド
:ファン1号
「……あれ?」
アパートに着いてポストを開けると鍵が入っていない。家を出ていく時はちゃんと入れたはずなのに。
もしかして無くした……?でもポストに入れた記憶はあるし……その時、ガチャリと家のドアが開いた。
「おかえり、ノラ」
中から出てきたのはもちろんサク。
「……わ、ビックリした。なんでいるの?」
思わずそんな言葉が出てしまった。
だって、いつもこの時間はまだ仕事のはずなのに。
「いるよ?俺の家だもん。今日は仕事早く終わったんだ」
なんか今日は機嫌がよさそう。でもサンセットのことを言ったらまた不機嫌になっちゃうかも。
「なにブツブツ言ってるの?早く中に入りな?」
あまり意識したことないけど、こうやって誰かに迎えられるのは嬉しい。
いつまで私はここにいていいのかな?
いたいだけいればいいってサクは言ってくれたけど、それは〝ずっと〟じゃない。
「ねえ、見て見て」
サクがなぜか嬉しそうにテーブルに置いてある箱を指さした。
「……なに?」
開けてと言うサクの視線を感じて、私は箱を開けてみた。
そこには大きなホールのショートケーキ。赤いイチゴがたくさん乗っていて、生クリームの甘い匂いがする。
「これどうしたの……?」
今日はだれかの誕生日?
「今日店で注文ミスのケーキがでたんだ。一個でいいのに間違って二個作っちゃったらしいよ」
たしかにチョコレートのプレートには【誕生日おめでとう ちひろちゃん】と書いてある。
「へへ、妹が誕生日なんですって貰ってきちゃった」
本当に嬉しそう。ってか妹って私?