黄昏バラッド


公園に着くと、サクはいつもの場所に座った。

相変わらず人気(ひとけ)がなくて、目立たない所だけど。向こうでわけの分からない曲を歌っている人のほうがお客さんが多い。

サクのほうが100倍いい歌なのに。


――♪♪

サクが最初に弾いたのは歌詞のないメロディー。

やっぱりすごいな……。ギターだけでなんでこんなに心地いい曲が弾けるんだろう?


「その曲に歌詞はないんですか?」

サクに話しかけてきたのはふたりの女の子。肌寒いのに薄着で、いわゆるギャル系。

「今考えてる途中なんです」

演奏を中断されたのに、サクはイヤな顔ひとつせずに笑顔で対応している。


「たまにここで歌ってますよね?通るたびに気になってたんですよ」

女の子たちはきゃぴきゃぴとしていてテンションが高い。むしろ私と同い年くらいなのに、私がテンション低すぎというか……冷めているだけなのかも。


「すごい良い曲ばかりですよね。自分で作ってるんですか?」

ついには座りこんでサクと話す気満々だ。

「うん。そうだよ」

サクはいつものサクだけど、私ひとりで浮いていて少し虚しい。
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