黄昏バラッド
暫く雑談が続き、私はコンクリートの上を歩くアリをひたすら見つめていた。
「また聞きにくるんで、今度はいつやるんですか?」
またって……全然サクの歌聞いてないのに。むしろサクと話すのが目的って感じがする。サクは私の思いとは裏腹にそんな会話にも笑顔で答えていた。
やっとこの空気に解放されたと思いきや、女の子たちのトドメのひと言。
「あの子ずっといたけど彼女かな?」
「えー違うっしょ。追っかけじゃん?ってか今度連絡先聞いてみようよ」
……全部聞こえてますけど。
サクはそのあと、なにもなかったかのように曲を弾く準備をはじめた。
「ノラ、口がへの字になってる」
クスクスと笑いながらサクが私をからかう。
「なってないし。ってかあの子たち絶対にサクの曲じゃなくてサク目当てだったね」
サクは女子受けする顔だし、驚くことではない。
「うーん。どうだろうね。ってか寒そうな格好してたよね。あの子たち」
またのほほんとした答え。
たしかに寒そうだったけど、露出が多い服のほうが男子は好きなんでしょ?
「こんなこと言ったら若くないことがバレちゃうよね」
まあ、サクはあんまり興味がないみたいだけど。