黄昏バラッド
「今度から離れて見てようかな。私が彼女だって思われたらサクが可哀想だし」
さっき〝違うっしょ〟って言われたけどね。否定はしないけど、言うなら聞こえないところで言ってほしい。
「なんで俺が可哀想なの?」
……そこ突っ込むんだ。べつに深く考えて言ったわけじゃないから、聞き返されてもなあ。
「知らないよ。でも私がいたら女の子たちが寄って来づらいんじゃないかと思って」
「俺の追っかけとか言われちゃったもんね」
聞こえてたんですか。だったらはじめからそういう反応してよ。
「はあ、私はサクの追っかけなんかじゃないのに」
ってかなんで私がイライラしなきゃいけないんだろ?普段怒るタイプじゃなかったんだけどな。
「なんで?追っかけになってよ」
「………」
これは天然?それとも本気で言ってるのかな。
どっちにしてもこういうことを言うから女の子は勘違いするんだよ。
……私はしないけどさ。
「私は追っかけじゃない。サクのファン」
勘違いされちゃ困る。
私はサクのメロディーが好きで、歌詞が好きで、声が好きなんだから。
「じゃあ、ファン1号だ」
サクは嬉しそうにそう言った。
1号なんて、もうサクのファンはいると思うけど……。でもやっぱり嬉しいよ。