黄昏バラッド
私は出勤時間に間に合うように早めに家を出た。
仕事は10時から4時まで。
予定では家から30分くらい歩けば着くはずだけど、不安だから1時間前に。地図を片手に昨日鉄さんと通った道をひたすら歩いた。
不安があるとなんでこんなに道のりが遠く感じるんだろ。まだ5分しか歩いてないのに。
給料を貰ったら自転車でも買おうかな?あればサクも使うだろうし。
「彼女〜!乗ってかない?」
なにこの古いナンパ。
今どきこんなことを言う人がいるんだ。
「ってかシカトっすか?野良猫ちゃん」
「……え?」
野良猫という単語に思わず反応してしまった。
しかも振り向いたら、ナンパ男は鉄さんだし。
「なにやってるんですか」
相変わらずロックな服装だけど、後ろからきたから全然気づかなかった。
「そのペースじゃ出勤時間間に合わないよ?乗りな」
私は昨日と同じく鉄さんの後ろに乗せてもらうことにした。バイクが走り出すと、気持ちいい風が顔に当たる。
「俺優しくない?惚れるなよ?」
「大丈夫です。ってか鉄さんって今の時間に出勤なんですか?」
信号待ちの他愛ない雑談。
店長って普通早く行って色々やるものじゃないのかな。私の勝手な想像だけど。
「早く行ったって暇だし準備はスタッフがやってるし?」
「……鉄さん店長ですよね?」
「店長だから遅く行くんじゃん!まあ、店長ならではの特権ってやつ?」
とにかくサンセットはゆるい感じのお店らしい。