黄昏バラッド



店に着くと従業員たちは開店の準備をしていた。


「あ、麻耶ちゃんおはよう」

そんな声が次々と飛んでくる。


……そっか。ここではノラじゃなくて麻耶なんだ。

自分の名前だけど、ちょっとヘンな感じ。


「これエプロンね。仕事は大体みんなの見てれば分かるからさ」

鉄に渡されたサンセットの白いエプロン。

私本当に今日からここで働くんだな……。今さら色々なことを実感してきた。


仕事の内容は注文やドリンク作りや食器洗い。レジ打ちはまだできないから徐々に覚えてと言われた。

注文と言ってもカフェだからあまりメニューは多くはないし、なんとかやれそうだ。

見た目が怖いゆっきーさんやたかみーさんも真面目にやってるし。


「どう?初出勤は」

溜まった食器を洗っている私に鉄さんが声をかけてきた。


「大変ですけど、大丈夫そうです」

みんな優しいし、お客さんも常連ばかりで気さくだし。


「ならよかった」

鉄さんも店に着いたらちゃんと店長っぽいしね。


「ここで働くって言ったら亮なんて言ってたー?」


鉄さんはパソコンをカチカチといじりながら聞いてきた。

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