黄昏バラッド
「まあ、本当は客じゃなくて従業員として来て欲しいんだけどね」
鉄さんはパソコンの前に戻り、またなにかの作業をしていた。
「従業員として?私はぜんぜん大丈夫ですけど……」
「いやいや、麻耶ちゃん未成年だから夜働かせたら怒られるし。夜は酒も出すからさ」
ちょっと夜のサンセットも面白そうだけど、鉄さんが捕まったりしたら大変だからダメだね。
でも私がいなくても他に従業員はいるし、人手は足りてると思うけど。
「あいつらほとんどステージに上がるから夜は人手不足なんだよなあ」
私の心の声が聞こえたみたいに鉄さんが言う。
あいつら?ステージ?どういうこと?
「ここで働いてる連中はみんなバンドマンだから。あそこの隅に段差があるだろ?あれがステージになるの」
それってゆっきーさんやたかみーさんも?みんな音楽をやってる人たちだったんだ。
しかも夜はあのステージで演奏するってことだよね?
どんな感じなんだろう。見てみたいな。
「ちなみに俺もバンドマンだけどね。楽器はベース」
そういえば鉄さんはサクとバンドをやってたって言ってた。
サクはギターで鉄さんはベース。
サクのギターや歌はいつも聞いてるけど、きっとバンドの音色とはぜんぜん違うんだろうな。
「……バンドってサクと鉄さんふたりだけでやってたんですか?」