黄昏バラッド
「……♪♪」
夕暮れどき、サクの歌。
きっと世界中で今サクの歌を口ずさんでるのは私だけ。
サクは5年前、なにを目指して音楽をやっていたんだろう。
自分の曲をたくさんの人に聞いてもらうため?
それとも音楽の世界に入るため?
私は素人だし無知だし、なにも分からないけどサクはきっとプロになってもやっていけると思う。
もしそうなったら嬉しいけど、私は寂しくなるね。だってサクが手の届かない人になってしまうから。
……なんて、未来の話をはじめたらキリがないか。
私はアパートに帰る前にスーパーに寄って、貰った給料で野菜やお肉や食料品を買うことにした。
サクはいつもコンビニ弁当だし、嫌いじゃないけど料理くらい私だって作れる。
お金がなかったから買えなかったけど、初給料はサクのために使おう。これなら無駄遣いって言われないし。
いつもサクにはお世話になってるし、私がサクにできることってこれぐらいしかないから。