黄昏バラッド
「ノラなんで泣いてるの?」
サクが私の顔を覗きこんでいる。
なんで泣いてる?私だって知らないよ。
「涙がカレーに入ってしょっぱくなるよ?」
その言葉を聞いて私はバンッ!と勢いよく立ち上がった。
いつもなら和めるサクの言葉も今はなんかダメかも。
べつに料理に喜んでくれなかったとか、反応が薄かったとか、そんな下らないことで泣いてるわけじゃないよ。
ただサクといるといつも不安になる。
この生活はいつまで?
サクといられるのは一体いつまで?
私たちの関係に名前はないから、だからいつも〝終わり〟を考える。
「ごめんサク……。ちょっと頭冷やしてくる」
私はそう言って家をでた。
本当はこんなはずじゃなかったのに。カレーをふたりで食べて美味しいねって言い合えればよかったのに。
私はいつの間に欲張りになっていたのかも。
サクを独占したいわけじゃないし、彼氏彼女の関係になりたいわけじゃない。
でも、サクの過去を知れば知るほど自分が無力に感じる。
サクにはたくさん色んなことをしてもらったのに、私はなにもできない。
自分の逃げてきた過去でさえも立ち向かうことができない。