黄昏バラッド
私はサンセットへの道のりを頭で確認しながら歩道を歩いていた。
「彼女〜!乗ってかない?」
……これはデジャブというやつですか?
「なにやってるんですか、鉄さん』」
振り向かなくても分かる。こんなダサいナンパしてくるの鉄さんしかいないし。
「なにって出勤だよ。ほら乗れ」
鉄さんはいつものようにヘルメットを私に投げた。
「今日はいいです。道も覚えたし歩いて行けますから」
ヘルメットを返そうとしたけど、強めに突き返されてしまった。
「店長命令だぞ?いいから乗れって」
「………」
店長命令とかズルい。
そんなこと言われたら逆らえないな……と思いつつ、私は渋々バイクの後ろに股がった。
私的にはラクだしありがたいけど、鉄さんにまで甘えたら本当にダメ人間になっちゃうよ。
「惚れた?惚れた?今日こそ俺に惚れたっしょ」
鉄さんはバイクのエンジンをふかしながら意味不明なことを言ってくる。
「……惚れてほしいんですか?」
「いや、惚れられても困るな。俺胸のでかい人が好きだから」
あっそ、聞いてないし。ってか遠回しに胸がないって言われたよね。