黄昏バラッド



「麻耶ちゃーん。なんで昨日のライブ来てくれなかったんだよ」

「そーだよっ!俺らのめちゃめちゃカッコいいところ見て欲しかったのに」

店の中に入ると、すぐに従業員の人たちに囲まれてしまった。みんなすごい髪色してるし、口ピとか鼻ピとかもしてるけど怖い人じゃない。


「すいません。昨日は色々と忙しくて」

忙しい原因を作ったのは私だけどね。それに、例えサクにライブ見に行こうって言っても来ないよね、きっと。


「まあ、昨日だけじゃないし。今日も明日もやるから暇な時は絶対見に来てよ」

ライブハウスは定休日以外は休みなしでやってるみたい。

みんなが言うにはライトも薄暗くして、昼間のカフェとはぜんぜん雰囲気が違うんだって。


本当はサクと見に行きたいけど、無理やりなんて嫌だし。

それに鉄さんに顔を出せって言われても出さないってことは、やっぱりサンセットには来たくないんだと思う。


――ガランガランッ。

その時、入り口のドアに付けてある鈴が鳴った。

これが鳴ったということはお客さんが来た合図。


「いらっしゃいませ」

入り口の近くにいた私はすぐに対応した。開店してすぐにお客さんが入るのは珍しい。

席へと案内しようとしたけれど、お客さんはズカズカと店内に入ってカウンターへと座った。
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