意地悪なアイツ【完】
「お前は俺のことどう思ってんの?」
眉を下げ、凄く不安な顔をする健人。
今すぐ、あの胸に飛び込んで
あの腕に包まれたらどれだけ幸せだろう…
私は健人から受けた質問に答えることができず教室を飛び出した。
走って…走って…走って…
どれくらい走っただろうか…
何も考えず、ただひたすらに走った。
『はぁーはぁー』
周りを見ると目の前には川がある…
やっと自分が家の近くまで
走ってきたことに気づいた。
『私こんなところまで走ってきたんだ』
土手に腰を下ろし息を整える。
激しかった鼓動が少しずつ少しずつ
落ち着きを取り戻していく…
川のせせらぎを聞きながら
心の奥底に閉まっていた健人との思い出の引き出しをそっと開けた。
外に出たいと言わんばかりに溢れ出てくる…
そして私はいつの間にか涙を流していた。