意地悪なアイツ【完】
空を見上げると薄暗くなり、
ちらほらと街灯がつき始めていた
左の胸ポケットに入っていた
携帯を取り出して時間を確認する。
【18:56】
『はぁ~…もうすぐ7時か…』
家に帰ろうか…
そう思っていた時だった。
「なに溜め息なんかついてるんだよ」
聞き慣れた、あの低い声が
後ろから聞こえてきた。
そっと振り返ると
やっぱりそこには健人の姿が…
「勝手に逃げんなよ…」
いつも強い口調なのになぜか今日は弱々しい
声が小さすぎて
この川の音に消されそうなくらい…
健人は私の横に座った。
「唯…」
健人の方に顔を向けるが一言も言葉を発さない。
『なに?』