意地悪なアイツ【完】
「なんで言ってくれないんだよ…」
涙ぐんだ声。
頭を抱え込んでグチャグチャになった髪。
「そんな事聞いても、
俺はお前の事嫌いにならないし
離れたりもしないよ
迷惑とも思わない…
逆に言ってほしかった…」
顔を上げた健人は涙を流していた
一年以上一緒にいるけど、
こんな健人を見るのは初めてだ。
『ごめんなさい』
「もー終わったことだから気にすんな
これからは
何かあった時はちゃんと俺が守るからな
俺がお前の目になる。
だから心配すんな」
健人の手が私の肩へと回る。
そっと抱き寄せられた私の体は
どこか少し熱くて…
懐かしい気持ちになった。
水面に反射した街灯が健人の顔を照らし、
ハッキリと表情を教えてくれる。
右手が私の顎に添えられ、
いつになく甘い顔をするアイツに
私はアイスが溶けそうなほどの
幸せな気持ちに包まれた。