【完】運命は罠と共に
田中さんからのキスに翻弄された。


どのぐらい続いたのか、長い長い時間に感じた。


余裕のない自分に比べて、楽しそうで余裕のある田中さんに少しだけ悔しかった。


確かに私は恋愛経験と呼べるものは少しだけしか存在しない。


田中さんは女性慣れしてるんだろうなーって考えて、なんだか嫌な気分になった。


どうしてこんな私を好きって言ってくれるんだろう。


田中さんのことに関しては自身なんてものは全く存在していなかった。


やっぱり泊まるってことは、そんな展開になるよね?


そんな行為自体久しぶりで、どう立ち回ればいいか分からないのが正直なところ。





それにあんまり行為自体にいい思い出がなくって、極力避けてきた。


初めての時も相手は私が初めてなんて微塵も考えていなかったらしく、私もそれを言えなくてただ痛みに耐えるしかなかった。


その後も同じ。


大学の時の何人かの彼氏も、看護師になってすぐの頃の彼氏も、私がそれなりに経験あると思い込んで要求してきた。


本当は違うのに。


少しでも躊躇すると「俺とはできないの?」って、怒った様に乱暴に扱われることも何度かあった。






嫌な事を思い出しちゃったな。





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