【完】運命は罠と共に
「ベッドは……本当になんの意味も存在しません。あえて言うなら狭いシングルが嫌だったからですね。そして、その服は兄のです。私が夜勤で家に居ないときと飲み会が重なるとここに泊まっていくんですよね。家より近いからって言って。そのために常備してある服なんですよ。これでいいですか?」


私的には何にも感じていなかったことだけど、田中さんからしたらそうではなくて、説明ないと確かに疑問に思われても仕方ないよなーって、説明しながら思った。


長い説明も終わり安心しきっていたところで、急に田中さんの引き寄せられた。


また抱きしめられていた。




「ちょっと俺の顔見ないでくれる?変に勘ぐってかっこ悪いよな」


私の頭を抱え込んで、長い溜め息を吐く姿になぜだか嬉しくなった。


こんな彼もいるんだって知ることが出来たから。


「かっこ悪くなんてないですよ。知らなかった一面を知れた感じで、嬉しかったです」


田中さんの腕から抜け出して、ちゃんと目を見て伝えた。


今日はいつもの私と違って素直になれた。


私を知ってもらうためには、素直にならないとダメだよね?


想像とは違って、なぜだか困った顔をする田中さんと目があった。







「……ごめん、もう無理」


え?と思ったときにはまさかのお姫様抱っこ。


お姫様抱っことか初めての体験。


私を軽々と抱えてしまえるなんて、田中さん鍛えてるんだなって呑気に考えていると、そこはすでにベッドの上だった。


今日知った田中さんの一面、行動がすごく唐突なこと。って、入院中もだったか。


こんな彼だったからこそ、私は恋に落ちてその気持ちに気付かされたんだったね。


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