【完】運命は罠と共に
「……もう起きたの?身体きつくない?俺、余裕無くってさ…」


田中さんの顔をしばらく眺めていると、彼も目を覚ましてしまった。


もう少し見ていたかったのに。残念。



「少し前に目が覚めました。大丈夫ですよ、それに幸せでしたから」


昨日から素直に言葉が出てくることに自分でも驚いた。


自覚してなかったけど、言葉にしたくなるくらい幸せなんだろうな。


「よかった。まだ5時か…もう一眠りしてどこかに出かける?」


眠そうな目をしながら尋ねられた。



出かけるってデートってことだよね。


やばい、行きたい。絶対に行きたい。




「行きます!!!」


我慢できずに即答してしまった。思っていたよりも大きな声で。


クスクスと笑われてしまった。


「そんなに顔してもらえたら俺も嬉しくなるね。見たい映画あったんだけど、付き合ってくれる?」


今度は声には出さず大きく、そして何度も頷いた。


「決まりだな。じゃあもう少し寝ようか」


少し離れていた身体を、引き寄せられた。


またもや田中さんの腕の中で、胸に顔を埋める体勢になった。


あー、このポジション落ち着く。


だって、ほら。また眠たくなってきた。






「おやすみ」


遠くなる意識の中で、数時間前の艶のある声とは違う、優しい声が聞こえた。
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