【完】運命は罠と共に
「お待たせ、迎えに来たよ」


パッと後ろを振り向くと、少し息を切らせた田中さんが立っていた。


「ありがとう、助かった」


最後の助かったは田中さんにしか聞こえてないと思う。


田中さんにはちゃんと聞こえていたらしく、クスリと笑われた。



「え?田中さん?何で?」


急に登場した田中さんの存在に、中川さんが戸惑っていた。








「俺のだから。離してくれる?」







戸惑いを隠せない中川さんの腕を私から離しながら言う田中さん。


ヤバイ。

今の台詞いい。

なんか感動した。


ただ嬉しかった。


だからいつもはしないのに、田中さんの腕に抱きついたりしてしまっていた。


そして、ニッコリと笑って言ってやった。


「迎えが来たので帰りますね。お疲れ様でした」


心から笑えた。


面倒な人を引き離してくれたし、俺のって言ってくれたのが本当に嬉しかったから。



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