【完】運命は罠と共に
「あっ…これって……」
やってしまった。
今日の俺の行動を後悔した。
今日というか、もう昨日か。
すっかり忘れていたが、バレンタインデーだったんだよな。
男ばっかりの職場で、話題にするような歳でもなく、本当に忘れてしまっていた。
というか、これわざとだよな?
普段から整理されている冷蔵庫に、不自然に真ん中に置かれたこれ。
しかも、ちょうど俺の視線の高さ。
「気付いて」と主張しているとしか思えない。
どうみても手作りで、奈々が俺のために作ってくれたものだとしか思えない。
彼女はどんな思いでこれを冷蔵庫に仕舞ったのだろうか?
いつもと明らかに違う行動に、胸が痛んだ。
もしかして、待っていてくれたのではないだろうか?
無性に奈々の顔が見たくなり、急いで寝室へと向かった。