【完】運命は罠と共に
彼女の腕の中にあるものを見て、またも後悔した。


「ごめん、奈々」


腕の中にあったのは俺のパジャマ。


どうってことないって感じだったメールに安心しきってした事を、申し訳なく感じた。


本当は寂しかったんだよな。


いつも平気な顔をして、自分の気持ちを飲み込もうとしているのには気付いていた。


だから、強がっていても、本当は寂しいんじゃないかって、想像できたはずなのに。


こんな弱い姿を見たのは初めてで、衝撃的だった。


奈々のことが愛おしくて、愛おしくて仕方ない。


守ってやりたいと思った。そして、俺にだけにはこの弱さをもっと見せてほしい。


そんな思いで彼女の頭を撫でると、苦しそうだった表情が、和らいだ気がした。

< 170 / 206 >

この作品をシェア

pagetop