【完】運命は罠と共に
チョコレート。

そうだった……私、怒ってたんだった。


「そんなの知らないです」


素直に彼の帰りを喜ぶは尺だったから、彼の腕の中で寝返りをして、完全に背を向けることで、怒っていることをアピールした。


「ごめんな、奈々。待っててくれたんだろ?俺のためにチョコも作って」


ちゃんと気付いていてくれたんだ。


嬉しい。


けど、素直に言えないのが私なんだよなー。



「……」



なんて言えばいいか分からない。


だから、何も答えることが出来なかった。


本当は数秒しか経ってないであろう時間が、すごくすごく長く感じた。


せっかく洋輔さんがいてくれて、さっきまでの寂しさなんてどこかへ消えてしまったのに、素直になれない自分が嫌になった。


洋輔さんも素直な可愛い女の子の方がいいんだろうなーって、考えなくてい
いことまで考えてしまって、自然と涙が出てきてしまった。


背を向けていてよかった。


これなら洋輔さんに泣いてること気付かれないよね?

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