【完】運命は罠と共に
―――ジリリリリ。


「うー、もう朝か」



私はすぐに目覚まし時計を止めた。



携帯のアラームだと、時々充電を忘れることがあるから不安だった。



過去にそれで遅刻したことがある。



今日は遅刻するわけには行かなかったから。




「いよいよか」



そう。今日は田中さんの退院日。



奇跡ってくらいに、偶然が重なった。



たまたま日勤で、田中さんの病室は今日の私の担当部屋。




入院最後の日に、一番関わることの出来る勤務になっていた。




「さ、気合入れていくしかないね」



1人暮らしが長くなると独り言も増えるらしい。



でも今日は自分にしっかり言い聞かせたかった。




少しでも田中さんの印象に残れますように。


看護師として、ちょっとだけ女性として。




自分でも可笑しくなるくらい気合が入っていた。



昨日の夜、パックをして、美顔器をあてて……



化粧のりはばっちりのはず。


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