私を壊して そしてキスして

「菜那、俺がいる。お前は必ず、立ち直れる」

「――はい」


暫く目を閉じて、彼の体温を感じる。
すると、不思議なことに少し落ち着いてきた。


「翔梧さん、お仕事……」

「あぁ、少しくらい、サボってもいいだろ。あいつに頼まれたし」


あいつって?

「恵美さん?」

「そう。あいつよかったって言ってたぞ? 菜那がずっと不安そうな顔をしていたからってさ。
菜那を不幸にしたら、あの手この手で飛ばしてやるって脅かされたけどな。
たく、あいつは誰よりも怖いよ」


すごくおかしそうに、そんなことを言って笑う。


恵美さんが、そんなことを。
会社では、なんでもないフリをしていたのに。
ごく近い人たちには、バレていたのかもしれない。

翔梧さんにだって……。


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