私を壊して そしてキスして

「菜那、起きたのか?」

「ごめんなさい。私、寝てしまって」

「寝ろと言ったのは、俺だぞ? 悪い。タバコ臭いな」


慌ててタバコをもみ消して、私の頭に手を置く。


「少し、顔色がよくなったな」


きっと、早く帰ってきてくれたに違いないのに。
なんとなくそんなことを考えると、何だか泣きそうにさえなる。


「なんで、そんな顔をする」


その言葉と共に、涙がこぼれてしまった。


「菜那……」


ゆっくり彼に誘導されて、その腕の中に納まる。


「俺は、菜那に何をしてやれる?」


私はその言葉に小さく首を横に振った。

もう、十分。
私をここへ連れ出してくれただけで。


「菜那……」


そうやって、私の名を呼んでくれるだけで……。



< 103 / 372 >

この作品をシェア

pagetop