私を壊して そしてキスして
「菜那、起きたのか?」
「ごめんなさい。私、寝てしまって」
「寝ろと言ったのは、俺だぞ? 悪い。タバコ臭いな」
慌ててタバコをもみ消して、私の頭に手を置く。
「少し、顔色がよくなったな」
きっと、早く帰ってきてくれたに違いないのに。
なんとなくそんなことを考えると、何だか泣きそうにさえなる。
「なんで、そんな顔をする」
その言葉と共に、涙がこぼれてしまった。
「菜那……」
ゆっくり彼に誘導されて、その腕の中に納まる。
「俺は、菜那に何をしてやれる?」
私はその言葉に小さく首を横に振った。
もう、十分。
私をここへ連れ出してくれただけで。
「菜那……」
そうやって、私の名を呼んでくれるだけで……。