私を壊して そしてキスして

その日の夜は、彼が私をベッドに引き寄せて、ギュッと抱きしめながら眠ってくた。

男の人がこんな風に何もしないで……。
そんな優しさに、打ちのめされそうだった。


「あぁ!」

けれどやっぱり見てしまう悪夢。


「菜那、どうした?」

結局、疲れている彼を起こしてしまう。


「ごめんなさい、私」

「お前、毎日、こんなだったのか?」


そう。毎日眠るのが怖かった。
だから薬を飲んで、無理矢理眠るしかなかった。


ギュッと唇を噛みしめていると、彼が私の唇に指を伸ばす。


「そんなに噛んだら、切れるだろ。噛むなら、俺の指にしろ」


暗闇の中でも、私を真直ぐに見詰めていてくれるのが分かる。



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