私を壊して そしてキスして
母の愛
「行ってくる」
そう言って出ていく彼は、何度も何度も電話をくれる。
少しずつ、外にも出られるようになった。
近所のスーパーに買い物に行って、夕飯のメニューを考える。
「菜那、外か?」
周囲のざわめきに気がついた翔梧さんが、電話の向こうでそう言う。
「はい。スーパーに」
「そっか」
「夕飯、何がいいですか?」
「そうだな、ハンバーグ」
意外と子どものようなことを言う彼に笑う。
「気を付けて、帰れ」
「はい」
そんな他愛もない会話も、私の心を満たしてくれた。