私を壊して そしてキスして

「お母さん、でも……」


突然のことで戸惑ってしまう。

結婚をダメにして、散々迷惑をかけて――それでも、こんなことまでしてもらうなんて……。


「親らしいこと、少しはさせて頂戴。
あなたがこんなになるまで、気がつかなかったなんて、母親失格ね。

お金で済むことじゃないって分かってる。
でも、今は家に帰るより、ここに置いてもらう方があなたにとっていいと思うの。

菜那、靖司さんと何があったのかは知らない。
でもね、もう無理なら、また始めればいいじゃない。
あなたはまだ若い。いくらでもやり直せるでしょ?

そうね、柳瀬さんとだったら、お母さんうれしいけど」


「えっ」


母はそう言って笑う。



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