私を壊して そしてキスして
母にもらった通帳の事を翔梧さんに話すと、「それは大切に取っておけ」という。
いつか、もっと必要なときに使えばいいと、食費すら受け取ってもらえない。
「菜那、あんまり食べないじゃないか。
それに、お前が来てから作ってくれるから、外食しなくて済んで、よっぼと金もかからなくなってるんだぞ。
菜那の料理は、お母さん譲りなんだな。すごく美味い」
彼にそう言われると、私にもできることがあるんだって、気持ちが持ち上がるのを感じる。
随分、リラックスできるようになった。
まだ、時折嫌な光景がフラッシュバックするけれど、それでもそれに飲み込まれてしまうことは少なくなった。