私を壊して そしてキスして
「離して。私は何も話すことなんて……」
そう抵抗したものの、ギュッとつかまれたその手を振りほどくことができなかった。
そのまま、引きずられるように、少し人気のない路地に引き込まれる。
「菜那」
気安く呼ばないで。
「菜那、俺はお前とやり直したい。
愛希の事は、本当に申し訳なかった。
愛希に迫られて、俺……悪い気はしなくて。でも、バカなことをしたと思ってる。
分かったんだ。
愛希ではダメなんだ。
いつも菜那と比べてしまって、菜那の事ばかり考えている」
何を今更――。
「勝手なこと、言わないで。もう……もう無理だよ」
愛希に迫られたから?
自分の意志だって、あったんでしょ?