私を壊して そしてキスして
「すまない」
彼がハッと我に返って、私から手を放す。
そして、明らかに狼狽した様子で、私を見つめた。
「愛希を、お願いします」
「違う、俺は、菜那が――菜那が好きなんだ。
菜那を失って俺……菜那のことがどれだけ大切な存在だったのかよく分かったんだ」
私の肩に手を置いて、懇願するかのような彼。
けれど、私は首を小さく横に振った。
「ごめんなさい。もう、無理です。
それと、あの人は関係ありません。私を助けてくれただけです」
私の事は、もういい。
だけど、翔梧さんの名誉は守りたい。
恵美さんに出会ったとき、私をかばってくれた彼を思い出した。