私を壊して そしてキスして

「関係ないって、キスしてたじゃないか」

「私が、してほしいと頼みました。もう、いいですか?」


まだ恋人でもなんでもない彼が、私に大切なキスをくれた。
あの時のそれは、私を救ってもくれた。


「菜那が? そんな嘘……」

「嘘じゃない!」


彼の手を払いのけると、酷く驚いた顔をする。
思えば彼の前で、こんなに感情を露わにしたことがなかったかもしれない。

私は彼が怯んだすきに、一目散に駆けだした。


「菜那!」


そんな彼の叫びも、もう私の心には響かない。

愛希と靖司がどうなるかは知らない。
だけど、もう、私は関係ない。

もうこれ以上、私の心の隙間に入り込むのは止めて!



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