私を壊して そしてキスして

「どうした、何かあったのか?」


翔梧さんが心配して、私の顔を覗き込む。


「なんでもないです。あっ……」


「シチュー」そう言った彼の声を思い出しても、思わず立ち上がる。


「ごめんなさい、私、御飯……」


彼を見上げると、眉間にしわを寄せた彼が、私の頬に手を伸ばした。


「菜那、何があった?」


きっと私の頬の赤みに気がついてしまったんだ。

すごく真剣な顔をして、私の顔を覗き込む。
私は首を横に振って、なんでもないフリをしようとした。


「ごめんなさい、シチュー……」


だけど、彼に抱き寄せられた瞬間、ポロポロとこぼれていく涙。

ダメだ。
これ以上、心配をかけたりしたら。



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